第4, 5週目は Hematology を回りました。

フェローからのマンツーマン指導

3週間マンツーマンで指導してくださることになったフェロー(後期研修医)は、幸いにも IMG (International Medical Graduate) 。ご出身はエチオピア。2年飛び級で母国の医学部を卒業後、レジデントから米国に来られた、信じられないほどスマートな先生です。どんな質問にもわかりやすく的確に答えてくださいますし、逆に振ってくださる質問は、USMLE の必須事項ばかり。後で Step-Up To Medicine や Master the Boards (MTB) Step 2 CK を開いてみると、教わった内容がバッチリとまとめられていて驚く毎日でした。また、それらの基本事項を網羅的に確認した上で、さらに発展的なことを気が済むまで教えていただけるので、みるみる知識が増えて楽しい2週間でした。

Step 2 CK に向けたアドバイス

フェローは Step 2 CK で高得点を取るための重要教材(上記の2冊、MTB Step 3Secrets)や勉強の注意点についても事細かにアドバイスしてくださいました。言われた通りに教材を購入してそれらを勉強し、疑問点を解消してから UWorld を解くと、正答率 20-40% 台のトリッキーな問題も論理的に判断して自信を持って正解できるようになり、自分でもびっくりしてしまいました。こういう難易度の高い問題で高率に正解できるような、系統立ったベース学習や問われどころにフォーカスした学習を心がけない限り、いくら問題演習を繰り返しても付け焼き刃的な対応しかできず、2 CK ではなかなか高得点が取れない、ということを暗に示してもらったように思います。

Step 2 CK も大事!
「IMG はマッチングの際に Step 2 CKのスコアもちゃんと見られるし、小児科は相対的に競争が激しくないから、2 CK で良い点数を取れれば、単にレジデンシーを狙うどころか、良いレジデンシープログラムさえも全然狙えるよ」とフェローが励ましてくださいました。競争の激しい科(皮膚科、眼科、整形外科など)で Step 1 : 250 → Step 2 CK : 230 だとかなり印象が悪いけれど、そうでない科(小児科、精神科、一般内科など)で Step 1 : 225 → Step 2 CK : 250 なら逆に評価が上がる。だから、いずれにせよ、レジデンシーから米国臨床留学を目指す可能性が0でない限り、Step 2 CK のスコアもやはり大事。

英会話の機会まで...
今の自分にとっては、USMLE 以前に、英語コミュニケーション力の不足が最大のネックになっていますが、フェローはそのことも十分理解して下さっていたので、ランチやコーヒーブレイクの時もずっと一緒に過ごして、会話する時間もなるべく沢山作っていただいてきました。実習後にどうやってお礼をすればいいものか、真剣に思いあぐねてしまいます。

Hematology のコンサルト症例
実習は基本的に、フェローと一緒に5〜10人程度の担当患者さんを一緒に診て回り、新患症例があればそれに同行するスタイルでした(全てコンサルト症例)。フェローはその後、アテンディング(指導医)と1対1でプレゼンテーション&ディスカッションを行っていました。
(プレゼンテーションの冒頭でも必ず言及する) "Reason for consult" の多くは術後(移植後)の DVT/PE、あるいは基礎疾患に伴う DVT/PE のリスク評価や予防管理ですが、その基礎疾患は悪性腫瘍、感染症、自己免疫疾患、多臓器不全など多種多様で、あらゆる分野の勉強ができました。もちろん、稀少な血液疾患も数多く診ることができました。
アテンディングも本当に温かく指導してくださいました。1週目のアテンディングは、自身の出身地であるサウスダコタ州と、エチオピア、日本のそれぞれについて3人でのんびり話し合う時間も取ってくださり、思い出深い楽しい時間を過ごせました。多剤耐性菌のことを「ゴジラコッカス」「エボラバクター」などと表現されていたのがとても面白かったです。

Oncology のコンサルト症例
第1週は担当患者さんが多かったのですが、2週目は新患がほとんどなくあまりにも暇になってしまったので、実習科の Hematology だけでなく、Oncology のコンサルトにも同行させてもらいました。米国では固形癌の患者さんは基本的に、臓器別のドクターではなく Oncologist(腫瘍内科医)が診るシステムのようでした。フェローは Oncology の症例に関しては、Oncology 専門の別のアテンディングにプレゼンをして、直接指導を受けていました。そこでお会いしたアテンディングは、以前日本にいらしたことのある先生だったので、日本の話ですぐに打ち解けられましたし、僕が将来 (Pediatric) Oncology をやりたいことを知って以降は、会うたびにいろいろと気にかけてくださいました。来週のどこかでまたご一緒できればと思います。(最後のローテーションは希望通り緩和ケアに決まったので、そこでもまたお会いするチャンスがありそうです。)
Oncology のコンサルトはやはり難しい症例が多く、Stage IV/末期がんの宣告、緩和ケア/ホスピスの提案などを行うシビアな状況も何度かありました。患者さんの顔色をあまり伺わずに、伝えるべきことを一気にストレートに伝えてしまうのが、米国のスタイルのようでした。"But this is the reality..." という患者さんのつぶやきが今も忘れられないです。

悪性リンパ腫がご専門の教授
フェローは水曜の午後だけ外来担当があり、そこでは様々なタイプの悪性リンパ腫の患者さんを次から次へと診ていきました。わずか3〜4時間で、簡単な教科書に載っているメジャーな悪性リンパ腫をほとんど診られてしまう環境もさることながら、フェローが悪性リンパ腫の著名な教授からマンツーマンで指導を受けられるプログラムにも、改めて感銘を受けました。フェローとのディスカッション後に教授が診察室で行う、1つ1つの病歴聴取や注意深い身体診察は、フェローが取り損なった項目をその場で直接見せて示すかのようでした。その一連の光景や、プレゼンテーション&ディスカッションの様子を見ると、「いいプログラムがあっていいトレーニングができるから臨床留学しに来たんだよ」と目を輝かせながらおっしゃっていたフェローのモチベーションにも完全に納得がいきます。

外来では H&P も
外来実習では、フェローのみならず、アテンディングに直接付いて教わる機会もありました。その初日。最初の患者さんの診察室に入り、アテンディングと一緒に患者さんへのご挨拶を行った直後、まさかの展開が訪れました。アテンディングが突然「じゃまた後で来るからね」と言って、勝手に出て行ってしまいました(笑)予告無しの置き去り実習。一人で H&P をとれるように準備はしてあったので、病歴聴取も、身体診察も、口頭プレゼンも、自分なりにナチュラルにできたと思いますが、アテンディングのあの粋なやり方には1日中感心しっぱなしでした。

院内 GPS

外来の建物は今年の2月に出来たばかりで、いたるところにタッチパネル式のデバイスが設置されていました。一番驚いたのは、患者さんやスタッフが胸につける電子バッジ。埋め込まれたセンサーが GPS のような役割を果たし、患者さんやスタッフがどこの部屋にいるかがリアルタイムでスクリーン上のフロアマップや電子カルテに表示されるという、最新鋭のシステムが導入されていました。

どこで役に立つ/ツケが回ってくるかわからない
外来オフィスでフェローと話していた時のこと。PTLD (Posttransplant Lymphoproliferative Disease) から Alport syndrome に話題が移り、"What is the etiology?" と聞かれて "Mutation of the genes of type IV collagen synthesis." と答えた時、ちょうど居合わせてそのやり取りを聞いていたのが、悪性リンパ腫の教授でした。
Alport syndrome の原因は Step 1 を受けるなら覚えていて当たり前の知識だと思いますが、それでも教授は僕がちゃんと答えていたことに対して、「よく勉強しているね」と言ってくださり、「今度の月曜の夕方に Malignancy conference があるから是非聴きに来てね。とてもいい勉強になると思うから」と、カンファレンスに個人的に誘っていただきました。Alport syndrome の知識がこんなところで生きるなんて、全く想像もつきませんでした。
さらに、将来のキャリアプランを聞かれ、「英語が全然ダメなので...まずはそこを克服して、Pediatric Hematology/Oncology の分野で臨床留学したいです」と伝えたところ、「君の英語はベリーグッドだよ。僕は日本語が全くわからないけど、君は英語をたくさん聞いたり話したりできている。だから、それはすごいことだよ。今はうまく会話ができなくて大変だろうと思うけど、だんだん Comfortable に話せるようになると思うから、普段からいろんなスタッフと少しでも多く会話する機会を作ることを心がけて、これからも頑張って」と励ましの言葉をいただきました。本当に、すべてを尊敬できる先生でした。アメリカで実習できてよかったです。

HIT のお返しは... DVT/PE
2週目の木曜には、アテンディング(インドご出身の IMG)の指示・監督のもとに、フェローが10分程度の個人ティーチングレクチャーをしてくださる機会がありました。テーマは HIT (Heparin-induced thrombocytopenia)。UpToDate からプリントアウトした 4T-Score シートを用いて、評価方法のレクチャーをしてもらいました。それが終わると、アテンディングからトリッキーな課題(3種類の病態と血小板数の推移を記した簡単なメモ)を提示され「どれが HIT ?」と、即座に理解度チェックを受けました。そのアテンディングはぐいぐい課題を与えるタイプの先生で、翌日(金曜)の別れ際にも不意打ちで課題をくださいました。
「じゃあ、この前フェローがやってくれたような形で、DVT/PEについて10分くらいで今度は私たち2人にフリースタイルで話してもらうから、文献やガイドラインを読んで、月曜までに準備してきてね
シンプルですが、やりごたえのある課題です。


<来週に向けて>
・実習の充実
・英会話の機会の充実
・H&P の練習
・Step 2 CK に向けた学習の継続

やることは変わらないですが、次の一週間でまた少しでも多く成長できるように、1日1日しっかり取り組んでいきたいと思います。