もやもやした2日間
集大成と思っていた3週目の月曜・火曜は、担当患者さんを割り当てられず、「コンサルトで忙しくて構ってる暇がないから外来に行ってきて」とクリニックに飛ばされ、見学がメインとなりました。自分で学ぶことを見つけるのに苦労し、Step 1の結果通知も迫っている予感がして、もやもやした嫌な2日間に。


Step 1合格通知をもらった1日
翌水曜の朝に結果がわかり、気持ちを取り直してスタート。しかしほっと息をつく間もなく、朝一で指導医から大きな課題が与えられました。「割りあてる患者さんが来たよ。話を聞いて、診察して、patient noteを書いておいて。あと、今回の症例はすごく珍しいから気管支鏡手術の見学をしてきて。じゃね」といったんお別れ。そのあと、午後のカンファレンスを終えてから指導医と再会し、直接口頭プレゼンをしてフィードバックを受け、ディスカッションもして、色々な質疑も受けました。夕方にはカルテのフィードバックももらいました。(翌日も同様の実習を行いました)


気管支鏡手術の方は、時間も、場所も、ENT(耳鼻科)の担当レジデントもわからない状態からのスタート。それらが分かったあとも、更衣室の鍵を借りる場所、更衣室の場所、スクラブの場所、手術室の部屋番号など、わからないことばかり。結局10人以上のスタッフに声をかけて尋ねて、ようやく手術室での見学まで行き着きました。「自分で調べて調べて調べて」ではなく、「人に聞いて聞いて聞いて」やっていかないといけない場所だということ改めて感じました。手術室では担当医からレクチャーを受けることができました。

助けてもらったスタッフの中に一人、特に印象に残った人がいました。それは手術室の受付にいたボランティアの青年。本当に優しく対応してくれて、誰かのために力になりたいという態度に満ち溢れていて、目が輝いていました。よくよく話を伺うと、その青年は来年、メディカルスクールに入りたいと考えているようでした。自分自身も医学部に入る前、がんセンターの外来でボランティアをしていたことがあったので、彼の輝く目に込められたものが本当によく伝わってきました。と同時に、ずっと憧れだったアメリカの医療現場に来ることができて、しかもUSMLE Step1合格という臨床留学への最初の切符を手に入れたところなのに目の輝きを失ってしまっている、対照的な自分を自覚しました。初心を少し思い返すひと時になりました。彼には「とにかくメディカルスクールに入れるよう、日本に帰ってからも応援してるよ。グッドラック!」と声をかけて別れました。

大忙しの実習が終わった後、夕食はいつも通りメキシカンレストランで摂りました。野菜たっぷりで、美味しく、リーズナブルなので、毎日のように利用しています。(木曜には店員さんに「どんだけ好きなの?」と笑われ、日曜には「いつも来てくれるから今日はタダでいいよ」とまけてもらいました)
水曜は、肉をビーフにして、アボカドのペーストを追加して、ドリンクをつけて、いつもより3$の贅沢。Step1に落ちていたらまた受験料がかかるから...とそれまで節約を心がけていましたが、その心配もなくなり、肩の荷が減りました。この店を出たとき、偶然にも玄関ですれ違ったのが、午後に手助けしてくれた、あの青年でした。


Evaluation
ローテ終了後のアンケートに苦労しました。慣れない環境で色々な経験をしたので、良かった点や改善点をまとめるのにすごく頭を使い、英語なので時間もかかりました。労働時間に関するアンケート項目がいくつもあったのが特徴的でした。

オンデマンドの安全講習
8個の課題をゲーム感覚でクリアしていきました。内容は、火災時の対応、危険人物への対応、通訳対応など。ちゃんと動画をみていないと、突然表れるクイズに答えられなくて、もう一度見直さないといけない仕組みになっていました。火元のどこに消火器の先端を向けるのが最適かをドラッグして答えたり、襲われた時に逃げるのに適切な位置を選んだりするクイズもありました。講習さえもオンデマンド化してしまうシステマティックなところは、いかにもアメリカらしいなと思います。


<振り返り>
・システムに慣れれば慣れるほど、英語力とClinical skillsの不足で自分の成長が頭打ちになっていることを痛感するようになった。

・サブスペシャリティの選択科目ということで、指導医(Attending)が週ごとに変わり、アピールのチャンスに乏しかった。

・実習内容は週ごとの指導医の裁量に大きく依存した。放置、たらい回しになってもなんとか自分なりに具体的な目標を立てて、時間を上手に使って学んでいかないといけなかった。

・米国の臨床現場に実際に身を置いて、それまで抱いてきた純粋な憧れが薄れてきた時、自分が臨床留学を目指す真のモチベーションについて再確認させられた。

・指導医との1対1のやり取りで困ることは少ないものの、回診やディスカッション、オフィスでの雑談がなかなか聞き取れなかった。内容を推測するための思考が必要になり、そのうちにいつの間にか話が進んでいて、流れについていけなくなり、余裕を失い、積極的に話そうにも話せなかった。中にはそれを「寡黙で態度が消極的」と受け取る先生もいらっしゃったし、自分自身でもぼーっと突っ立っているやる気のない学生に思えて嫌になることが多々あった。どうすればいいか考えているうちにまた時間だけが過ぎていって、何もアピールできないまま終わった3週目だった。


<次のローテに向けて>
次は3週間、Hematology/Oncology/Transplantation(成人)を回ることになりました。臓器別で一番好きな分野で、Step 1の成績も分野別で最も良かったのがHematology。英語はまだまだですが、医学はデキると自分に言い聞かせて、UWorld Step 2 CK、Step-Up To Medicine、Master the Boards Step2, 3(Fellow Doctorの一押し)などのHematology分野を勉強しながら、充実した実習にしていきたいです。小児血液腫瘍でなかったのは残念ですが、一般内科なので教育体制が整っていることはお墨付きですし、昨年この科を回られた先輩もかなり良かったとおっしゃっていたので、期待大。3週間がとても楽しみです!これからが本番だと思って、日々ベストを尽くして取り組んでいきたいです。