1週目が無事に終わりました。

サ?プガースコア 
S:  Smile
A:  あいさつ(自己紹介)
P:  Passion(熱意、態度)
G:  Gratitude
H:  ホウレンソウ(報告、連絡、相談)
留学前に決めた、常に心がける5か条。あいさつが格段に難しいです。できて当たり前なのは重々承知ですが、それでも本当に難しいです。気の強そうなレジデントに笑顔で大きな声で "Good morning!" とあいさつしてガン無視された時なんて...笑
あいさつしてもその後の会話がなかなかできないことが多いので、今はSmileとPassionで何とかカバーしている感じです。この二つは日本の臨床実習でも日々心がけてきたことですし、言葉がうまく通じなくても伝えられる部分が大きいので、米国に来てからも間違いなく自分の取り柄になっています。厳しい状態の患者さんもいますが、今のところ、全ての患者さんとご家族にも温かく接して頂いているので感謝するばかりです。
自己紹介の方は毎日いろんなところで何度もやる機会があるので、何も考えずスラスラできるようになりました。
入退室時にグローブやエプロンの切れ端が落ちていたら拾うとか、カンファレンスルームで椅子が足りなかったら率先して集めに行くとか、日本人だからこそ率先してできるようなことも怠らないよう心がけました。

日米の業務内容の違い
建前のカンファレンス、雑用、非専門的な手技がないので、通常の米国小児科医の仕事はコミュニケーション(回診、ベッドサイドなど)とPC業務(カルテ入力など)が主体。
分からないことがあった時、日本ではいきなり聞くのはNGで、自分で調べないといけないことが多いですが、アメリカではむしろ、どんどん人に聞いてやっていけないとNGな感が強いです。近くの人に聞く、チームメイトに聞く、指導医に聞く。乳幼児の患者さんで、ご両親が不在で病歴聴取ができない時は、担当の看護師さんのところに話を聞きにいく。とにかく聞く、話す。コミュニケーションが日本以上に大事になる環境だと実感しています。

USMLEの勉強を本気でしてきてよかった

症例のことは詳しく書けませんが、USMLEの勉強が1週目からかなり役に立っています。
・Cystic fibrosis(嚢胞性線維症)
・Blastomycosis(風土病、真菌感染症 → Mississippi川流域はまさに圏内)
・MinorsのConfidentiality, Decision making, DNR...
・2CSのChallenging(患者さんから難しい質問や厳しい相談が飛んできて、対応に苦労するシチュエーション)

指導医に1週間つきっきり
専門科のElective courseということもあってか、Residentではなく指導医(Attending)の下について実習をさせてもらっています。指導医はDirector of Peds Pulmonologyなので、こんなすごい先生の下で直接教えてもらえることが驚きでした。実習内容は主に、毎朝8時半からの回診と、コンサルト症例への対応、ベッドサイド訪問への同行などでした。指導医はどんな質問にも親切に教えてくださいますし、初歩的な略語、電子カルテの使い方など、Directorが教えるようなことでなくても嫌な顔一つせずにいつも温かく説明してくださいました。また、マンツーマンでPFT(呼吸機能検査)のレクチャーをしてくださったり、先生が20年以上前に報告された「Blastomycosisを合併したCystic fibrosis」のケースレポート(超マニアック)を紹介してくださったりして、毎日が楽しく、感謝感激の毎日でした。
カフェテリアで昼食を取っていた時、「小児科の中でも呼吸器を専門に選ばれたのはどうしてですか?」と伺うと、「レジデントの時に小児呼吸器で出会った当時の先生が魅力的で印象に残ったからだよ」と答えてくださいました。きっと当時の先生も、今の指導医の様に、温かく熱心に指導してくださっていたのだと思います。自分自身が米国に留学したいと思った根本的な動機の一つが、"The American value system focuses on ambition, faith and gratitude in senior and junior relationships" であったことを思い出しました。

一人で問診・身体診察(H&P)をして、カルテ入力・口頭伝達
コンサルト症例は難しいものばかりですが、Seriousな症例であっても指導医はお構いなしに「じゃぁ1時間後くらいに戻ってくるから、一人で話を聞いて、診察して、電子カルテに入力してみて」と課題を与えてくださいます。初日にいきなり課題を与えられた時はもうどうなることかと思いましたが、その時は患者さんもご家族もお昼寝中だったので何とか免れることができました(免れてはいけないのですが)。それでも、First Aid 2CS で最低限の問診文は暗唱していましたし、聞くべき項目リストをメモ帳に書いて準備していたので、翌日以降は落ち着いてできました。初めてのケースで問診したご家族は本当に優しい方だったのでラッキーでした。
米国の実臨床でのH&P(History & Physical)のトレーニングは、ひとたび大学を卒業してしまったら米国でマッチしない限り二度とできない特別な経験(海軍病院などを除いて)。指導医からもらう課題は人生最大級の無茶振りに等しいですが、これを経験するために米国でのクリクラを切望してきたと言っても過言ではないので、来週以降も1つでも多く数をこなせるよう、貪欲にチャンスを求めて、勇気を持って頑張りたいです。

戦力扱い
上級医が別の仕事をしている間に、学生が新患のH&Pをとって口頭伝達( → 事前情報伝達)やカルテ記載( → 下書き)を行うことで上級医の負担は確実に減るので、米国では学生も戦力扱いされて、それでうまくシステムが回っているように感じます。ただ自分自身はまだ本当にひどい内容のカルテしか書けなくて、お手伝いになるどころか足手まといにしかなっていないのですが、それでも指導医は "Well done" と言って、内容を修正・追加しながら1つ1つ説明してくださって、なおかつ、そのひどい下書きをなるべく消さずに残してくださっていました。もうこの恩は一生忘れないですし、少しでも早く上達して、指導医の負担を減らせるようにしたいと思う毎日になっています。
また、指導医が珍しいコンサルト症例のカルテを書いている時、隣りで治療法に関して情報を集めるよう依頼される機会もありました。色々と検索した結果、複数の文献でいい追加治療(Steroids)が紹介されているを見つけました。それを興味深そうにチェックした指導医はそのまま、カルテのRecommendationの欄にその内容も記載しました。
"3. Some reports recommend steroids in ***** with ARDS."
NEJMのReviewだと、32例中9例(32%)しか生存できない状況にある超重症例で、そこに自分の調べたことが直接反映されてしまうのは驚きでした。もしもSteroidsが追加投与されて増悪して患者さんが亡くなってしまったら...といった可能性も考えると、自分にも責任がのしかかっていることを実感します。

電子カルテ(Epic)に慣れる
実習の合間や終了後にもなるべく電子カルテを多く使って、少しでも早く慣れるよう心がけました。訴訟対策や診療報酬システムも関わっているのだと思いますが、米国のカルテの詳細さには改めて驚かされました。Residentも記載する日々のカルテ(Progress note:Intern, Residentは毎朝このハンドアウトを参照しながら必死に回診プレゼンを行う)でさえ毎回、ROS(Review of System)なども含めて網羅的に書かれています。1つ1つのカルテが作品みたいで、プリントアウトすると論文みたいです。

日本人インターンが同じチームに!
驚くことに、同じチームに日本人のインターンの方がいらっしゃいました!これは本当に幸運なことでした。実習中に色々とサポートしてくださっただけでなく、プリペイド式の携帯電話を貸してくださったり、日曜に一緒に昼食をとったり、近くのlakeへの散歩や日本食スーパーに連れて行ってくださったりもしました。先生は「臨床留学にはとにかく推薦状(3通以上)が大事で、クリクラは将来のための貴重なチャンスだから、とにかくここで先生方に気に入ってもらえるように頑張って!!!」ということを何度も強調しておっしゃっていました。Step1の点数が低いと面接に呼んでもらえる場所がかなり限られますが、呼んでもらえなくても教授の伝で特別にお願いしてもらって面接させてもらえる逆転ケースも十分にあるとのこと。

隣部屋の日本人
経済学部3年生で、髪長の(自他共に認める)渋谷系女子。実際にかつて渋谷でアルバイトをしていたそう。お父さんはコロンビア大学にも留学されたことのある外科医。先週日曜にはFacebookで繋がっていましたが、定期試験ラッシュのため、最終日の木曜夜にようやく初めて会って食事をしました。いつも0時すぎまで図書館で勉強して帰る生活を送っていたようなので、家で全く会わないのは当然でした。価値観が合うので、目標、夢、多様性、宗教など、話が色々と盛り上がって楽しいです。
「ハワイの大学に入学したけど、ダレた雰囲気に流されて、これではダメだと思った。経済を本気で学びたいという目標があったから、親の反対を押し切って2年時からミネソタ大学に編入した」
「目標があって、学ぶために大学に通って、親も高い学費を払ってくれているから、毎日必死に勉強するのは当たり前」
「(期末ラッシュが終わって)今日は電車の中で勉強しなくていいから嬉しい。明日から長期休暇だけどリサーチの勉強をしないといけない」
日本ではこんな考え方を持つ人にはなかなかお目にかかれないです。

土曜には、有名な滝と、全米最大のショッピングモール(モール内に遊園地や水族館があるスケール)に連れて行ってもらい、友人の卒業式への顔出しにも同行しました。夕食も、土日は部屋で一緒に食べて、おすそ分けしてもらったりしました。
院生を含めて6万人いるミネソタ大学の学生のうち、日本人はたったの23人らしいので、そのうちの1人と偶然にも同じ家に住むことになって、色々教えてもらえることになったのは本当に強運です。


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1週目で環境やシステムに少しずつ慣れることができ、英語を聞く/話す感覚も冴えてきたので、来週からはもっと明るく積極的にアクティブに取り組んでいければと思います。