実家に帰省がてら、関西の屋根瓦式研修病院を3日間見学させていただきました。

1日目の朝にいきなり、総長の著書を4冊いただきました。大切に読みたいです。

1日目:総合診療科

1年目のジュニアレジデントに付きました。
てんてこまいで仕事に追われながらも、熱心に指導してくださいました。

検査オーダーの際は、要/不要に関する意見を求められましたし、血培の採血をしている時には、セット数・部位と感度についてのエビデンスを教えてもらえました。喀痰のグラム染色の際は、救急の部屋で実際にお手伝いをさせてもらえました。

昼は、毎日のように行われているヌーンカンファレンスを見学しました。持ち寄り症例を使った、レジデント主体の臨床推論カンファレンス。シカゴ小児科病院で見学したものとそっくりでした。みな自主的に参加されていて、発言も多く、とてもいい雰囲気でした。


夕方には、レジデントの手が少し空き、心音聴取のトレーニングをさせてもらえました。述べる項目だけ最初に示してもらい、あとは患者さんのところに行って、独力で聴いて所見を系統的に述べて、フィードバックをもらいます。これを3回繰り返しました。

もともと心音は苦手意識が強かったので、克服のため、CareNet の DVD を図書館で借りて見たり、シムリンピック前にシュミレータ(イチロー)で練習したりしていました。その甲斐あってか、今回は3例とも運良く基本所見を正しく答えることができ、レジデントを驚かせることができました。 

系統的に述べる癖をつけることで、「聴こう」という意識ができるので、何気なく聴診器を当ててしまうと聞き逃してしまうような所見も取れるようになる、と教わりました。
 

Wheeze か Rhonchi のような音も聞こえて、その音量が変な感じに変化する症例で、「これがチェーンストークス呼吸だよ」と教えてもらった時は感動しました。

医局では、MedCalc、添付文書 などの有用アプリも教えてもらいました。

<アドバイス>
・なるべく学生のうちにいろいろ勉強しておいたほうがいい
・感染症はとても大事。ただし深い内容は、現場に出てからでないと理解しづらい部分がある
・X 線や CT の所見が読めないのが、いま一番苦労していることかも
・看護師さんは本当に頼りになる存在。普段から絶対に仲良くしておいたほうがいい。看護師さんの顔と名前を一致させることも1年目に経験する大事なことの一つ


2日目:小児科(小児救急)

午前は負荷試験や、新生児黄疸の患者さんの入院までの段取りを見学できました。

外来診察→カルテ上で入院手続き→患者さんとご家族を病棟までご案内→ルート確保→保育器に移動→アイマスク→ブルーライト ON

この日は、ついてくださった2年目レジデントが小児救急のシフトだったので、午後は救急を見学しました。

子どもを上手にあやしながら、問診と身体所見をすいすいとって、鑑別と方針を考えて、指導医にコンサルト。とうてい2年目とは思えない臨床力で、指導医からも絶大な信頼を得ていました。


年齢・性別と主訴が書かれた書類を受け取って、一緒に患者さんを呼びに行くまでの移動時には毎回、「何を考える?」と質問を振ってくださり、一つ答えると「そうだね。他には?」と続きました。
コンサルや血培提出の際の移動中も、ひっきりなしに問答とアドバイスが続きました。

10分くらいの空き時間があると、マンツーマンでミニレクチャーもしてくださいました。

「抗菌薬が効かない場合、どう考える?4つカテゴリーを挙げてみて*」「肺炎で抗菌薬を投与して、治ってるか治ってないか、どうやって判断する?」といった内容。

対話形式なので常にアウトプットを求められ、有意義な時間を過ごせました。

教わった実践的知識は、やはりレジデントも初めは上の先生から教えてもらったらしく、それを皆が教えあって、レジデント全員に当たり前のように浸透していく、とのことでした。



3日目:救急科

朝のコアカンファレンスは、貧血の初期診療アプローチについてでした。
もうこれだけで、実家から1時間半かけて見学しに来た甲斐がありました。

この日も朝から夕方まで、walk in の症例を前に、1年目のレジデントお二人から実践的な知識をたくさん教わりました。試験やお給料、休みなど、こちらが聞きづらいようなことも積極的に教えてくださり、メールで過去問もくださいました。

お昼は、大学の部活の先輩(2年目レジデント)が当直明けながらご一緒してくださり、研修プログラムの本音をいろいろ聞くことができました。


救急室に戻って少しすると、看護師さんから「10〜15分後に CPA(心肺停止)入ります」のアナウンスがありました。スタッフの表情が変わります。
 

到着後、救急隊から「バイスタンダー CPR なし」の報告。採血結果も絶望的なものでしたが、奇跡を信じて約30分間、胸骨圧迫とバックバルブをお手伝いさせていただきました。

奇跡は起こりませんでした。

この30分の間に、指導医は指示をどんどん出しつつも、モニターの見方と蘇生の指標について口頭でレクチャーしてくださいました。
黙とう後は、ベッドサイドでレジデントへの気管挿管手技の指導が行われていました。 


夜には、月一回開催される、参加者100人規模の GIM カンファレンスに出席しました。

約2時間半で、3病院から3症例。診断はマニアックですが、大まかなカテゴリーは見当がつくことも多いので、そこを外さないよう挑みました。

15個のプロブレムリストを勘案する症例もあり、いろいろ想起し、考え、分からないことはその場で iPhone でどんどん調べて…という、超能動的なトレーニングができました。


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今回の病院は「コアレクチャーや臨床推論カンファレンスが充実していて、やみくもに手技だけこなすのではなく、しっかり頭を鍛えるトレーニングを受けられる」という前評判でした。しかし、実際にレジデントからお話を伺ってみて、手技の経験量やファーストタッチ症例数もかなり充実していることを知りました。

それでもって、最低限の休みも確保でき、"人間的な" 研修が受けられるので、どのレジデントも「バランスの良さがここの研修の大きな魅力」と感じているようでした。レジデントがみな仲良しで、とても楽しそうに研修していたのも印象的でした。


3日間、連日朝から晩まで勉強になり、本当にいい経験になりました。
またぜひ見学の機会をいただいて、マッチングで応募したいです。


*抗菌薬が効かない場合に考えること>
① 起炎菌をカバーできていない?
② 血流が乏しい?
③ 移行性が悪い?
 ・膿瘍
 ・臓器:骨/軟骨、脳、目、前立腺
 ・人工物、ドレナージ
④ 実は感染症でない?
他)ドーズが不十分(言語道断)、相互作用、耐性