7月30日、31日に行われた特別講演。

<1日目:米国での臨床研修について>
先生は米国で長年お仕事をされながらも、日本の医療にも深く精通されていて、意見を沢山主張されていたお姿がとても印象的でした。見習わないと…。

◎ 小児がんのフェローシップ
 - レジデンシーを終えた後の専門研修
 - 先生のところでは毎年3人募集
 - 倍率は高く、10倍を下回らない
 - フェローシップもマッチングシステムを採用
 - 1年目は臨床、残り2年は Scholarly activity(大体は Bench or Clinical research)
 - 3年間にプラス1年して、オプションで脳腫瘍に取り組むなども可能
 - 仕事に制限がある。例えば、化学療法のオーダーは正式には一人で書けない。アテンディングがサイン(アテンディングの責任)

◎ 専門医試験
 - 7年ごとに更新(Recertifying the board)
 - テストセンターにてコンピューター試験
 - 落ちる人もいて、みな必死に勉強
 - インターネットの講義も受ける

◎ 仕事の細分化、専門化
 - 点滴専門ナース、採血専門スタッフがいる(レジデントのスキルアップの弊害にもなるが)
 - 「楽。はっきり言って私はこのシステムが好き」

◎ その他
 - シニアレジデントには下を指導するスキルが必須 
 - 米国の医学生は日本のレジデントと同等のレベル(点滴やカルテ記載も行う)
 - 米国は実力主義と言われるが、それでも実際には、政治力の方がよっぽど大事
 - 統計学・臨床疫学の知識を若いうちに身につけること!知識がないとペーパーのレビューもできない。安くはないが、John's Hopkins のネット講座は◎
 - 米国にはデータ入力等を行う専門のスタッフ(CRA: データマネージャー)がいて、医師がデータを入力する必要がない。日本で臨床研究が遅れがちな要因の一つはシステム面
 - ラストメッセージ
  ① 語学力
  ② リーダーに
  ③ まずやってみる



<2日目:米国での小児がん臨床試験について>
医師向けでしたが、臨床研究にも興味を抱いていたので出席してみました。この講演では、米国での小児がん臨床試験のシステムを学ぶことができました。日本ではなかなか学べるチャンスがないので、出席して大正解でした。臨床試験に対するビジョンが大きくひらけました。

本気で臨床研究や臨床試験に従事し、医学に貢献するならば、やはり臨床留学して、米国で臨床や研究に携わっていくべきだな、という思いもさらに高まりました。

◎ COG (Children's Oncology Group)
 - 小児がんの臨床試験を行う大きな組織
 - NCI (National Cancer Institute) 's Clinical Trial Cooperative Group の1つ
 - CCG (Children Cancer Group)、POG (Pediatric Oncology Groups) 、NWTS (National Wilms Tumor Study) が一緒になって、15年前にできた
 - 米国に約200、カナダに17の施設がある。ヨーロッパにも存在
 - 米国の小児腫瘍患者のほとんど全てがCOGの施設で診察を受けている!!!
 - CCRN (the Children's Cancer Research Network) というプロトコールに従う。新しい Every Child Protocol は Bio-banking も目的としている
 - メンバーは医師のみではない。Hemato-oncologist は1/5くらい

◎ 新しい薬の開発に必要な4つの核
 ・FDA(日本でいうPMDA:医薬品医療機器総合機構)
 ・NCI
 ・Industry(製薬会社)
 ・Investigation/ Academia(※)

  ※ 重要な立ち位置を占めるもの
 ・IRB (Institutional Review Board) 
 ・CRA (Clinical Research Associate)…データ入力
 ・Research Nurse
 ・Contract Office  

◎ TACL (Therapeutic Advances in Childhood Leukemia & Lymphoma)
 - 2005年結成、徐々に登録数↑
 - Phase 1, 2 は TACL が行い、寛解率を評価。Phase 3 以降は COG が担当し、生存率などを評価していく。TACL の存在により、コストパフォーマンス◎
 - TACL は COG よりもさらに製薬会社と密接に連携。製薬会社との連携なしには臨床試験は成り立たない。「日本はちょっと心配」
 - ハイリスク ALL に対する JAK inhibitors の開発